2010年12月18日土曜日

メルケル・パパのお話

Футболист "Милана" Меркель хочет выступать за сборную России
ミランの選手メルケル、ロシア代表入りを希望

というリア・ノーヴォスチの2010年12月13日の記事より。
記事の後半、アレクサンドル・メルケルのお父さん、ヴァシリー・メルケルさんが話している箇所です。
(それ以外の部分は既出の記事とほぼ重複しているので省略します。)

"Мы - русские.

「私たちはロシア人なのです。

*русские(形容詞変化名詞複数主格)<русский

◆русскийは、россиянин(ロシア国民)と違って、民族的に東スラヴの「ロシア人」ということになります。
ですが、メルケル一家は本来はрусскиеではなく、他の記事などによれば
・Родился в Алма-Ате в семье советских немцев.(在ソ連圏のドイツ系の家庭)
・Александр Меркель родился 22 февраля 1992 года в городе Алма-Аты, Казахстан, в семье выходцев из Германии.(ドイツからの移住者の家庭)
・Александр Меркель родился в Алма-Ате в семье русских немцев,(ロシアゆかりのドイツ系の家庭)
などと書かれています。
拙ブログで何度も書いたように、ヴォルガ・ドイツ人の家系です。
ピョートル大帝やエカチェリーナに世の治世にドイツからヴォルガ河畔に植民→定住→第二次大戦時に「敵性民族」とみなされ、スターリンによって民族まるごと中央アジア・シベリアの僻地に強制移住→歴史的・政治的諸々の要因により元のヴォルガ河畔への帰還は進まず、ソ連解体後ドイツへの移住者が急増
簡単にまとめると、このようなことになります。(註)
メルケル一家は、民族的には明らかに「ロシア人」ではないのですが、

- Я чувствую себя больше русским, чем немцем.
-僕は自分のことをドイツ人だというよりロシア人だと感じているんです。

と言うように、ロシアに対して強烈なシンパシティーを持っています。
先祖代々ロシアで生きてきた、母語はロシア語、宗派はロシア正教、ロシアの伝統を守り、ロシアサッカーを観て応援している、他のスポーツでもロシアを応援している、と。

註:ソ連内のドイツ人の「ロシア化」(2011年1月2日記)
メルケル及びその父はインタビューで、自分たちの祖先はドイツから移住後は第二次世界大戦中にカザフに移住させられるまではロシアにずっと住んでいて、言語も宗教もロシアのそれである、と主張しています。
が、ドイツ系マイノリティーの人たちは、実際にはずっとドイツ人共同体で生活し、混血もあまり進まず、ドイツ人としてのアイディンティティーを維持していたようです。
そうしたドイツ人共同体の崩壊が始まるのは1940年前後。
つまり、スターリンによる強制移住が行われる頃。
そして、メルケルの話では「祖母(単数)がロシア人」だというので、年代的にはやはり1940年代というので一致しそうです。
この頃までは、メルケルの家庭もドイツ人共同体の中にあり、ドイツ語を話していたのではないか?という気がします。
1940年代以降、家庭内でもロシア語が話され、(ロシア正教徒になったのはいつなのかはわかりませんが)急速に「ロシア化」して、一方ドイツ文化が失われていった。そんな気がします。
メルケルのお父さんが「ずっと」ロシア人的に生きてきたと言うのは、心情としてはそうなのかもしれませんが、史実としてはどうなのか…。

У нас со всех сторон бабушки и прабабушки родились в России, - сказал отец футболиста Василий Меркель.

祖母たちと曽祖母たちはともにロシアで生まれたのです」
とメルケルの父、ヴァシリー・メルケルは語った。

 - Мы оказались в степях Казахстана только из-за Великой Отечественной войны.

「私たちがカザフスタンの草原にいたのは大祖国戦争のせい以外の何物でもありません。

Саша стал гражданином Казахстана только потому, что СССР распался буквально за два месяца до его рождения.

サーシャはね、ソ連解体が彼の生まれる2ヶ月前だったがために、カザフスタン国民になってしまったのですよ。

*за два месяца до его рождения(за+A(対格) до+B(生格)「BのAだけ以前に(時間的隔たり)」)

※この二つの文の中に出てくるтолькоという言葉には、「それさえなかったら…」(→先祖代々住んでいたロシアから離れてカザフに来ることもなかったのに)(→ソ連の市民権を得られ、ロシア国籍だったはず)というニュアンスが込められているようです。

Мы говорим на русском языке, чтим русские традиции, следим за российским футболом.

私たちはロシア語で話し、ロシアの伝統を尊び、ロシアのサッカーを観ています。

*говорим на русском языке(на+前置格)<русский язык
◆+対格
 изчать русский язык「ロシア語を勉強する」
  знать русский язык「ロシア語を知っている」
  любить русский язык「ロシア語が好きだ、ロシア語を愛している」
  понимать русский язык「ロシア語を理解している」
◆по+~-ски→на+前置格にほぼ置換え可能
 говорить по-русски(на русском языке)「ロシア語を話す、ロシア語で話す」
  читать по-русски(на русском языке)「ロシア語で読む」
  писать по-русски(на русском языке)「ロシア語で書く」
  понимать по-русски(на русском языке)「ロシア語がわかる、ロシア語で理解する」
 понимать русский языкは「ロシア語を理解できる」
  понимать по-русскиは「ロシア(語)風に理解する」
 понимать на русском языкеは「ロシア語で理解する」
 изчать на русском языкеだと、「ロシア語で勉強する(文学を/史学を/数学を/法学を)」
 любить по-русскиは「ロシア風に愛する、恋する」(「アンナ・カレーニナ」や「恋について」などロシア文学を気取りましょう)   
参照:黒田龍之助先生著『ロシア語の余白』中の<ロシア語で「ロシア語は」>
*чтим<чтить第二変化動詞

Поэтому он хочет играть за сборную России".

だから息子はロシア代表でプレイしたがっているのです。」

Меркель тренируется в составе первой команды "Милана" три недели.

メルケルはミランのトップチームで3週間トレーニングしていた。

*три недели(期間の対格)<неделя
 一週間なら(одну) неделю

А 8 декабря полузащитник дебютировал в ее составе в матче Лиги чемпионов против "Аякса" (0:2).

12月8日にはMFメルケルはチャンピオンズリーグの対アヤックス戦で交代要員としてデビューした。
試合は0-2だった。

*8(восьмого) декабря(順序数詞中性生格+月名生格)<восьмое декабря <декабрь

Полную версию эксклюзивного интервью с Александром Меркелем читайте на сайте РИА Новости.

アレクサンドル・メルケルのインタビュー全体はリア・ノーヴォスチのサイトでご覧ください。

*с Александром Меркелем(с+造格)<Александр Меркеь
 アレクサンドル(硬子音語尾の男性活動体)の格変化
 単数複数
主格АлександрАлександры
生格АлександраАлександров
与格АлександруАлександрам
対格АлександраАлександров
造格Александром Александрами
前置格АлександреАлександрах


 メルケル(-ьの男性名詞活動体)の格変化
  単数複数
主格МеркельМеркели
生格МеркеляМеркелей
与格МеркелюМеркелям
対格МеркеляМеркелей
造格МеркелемМеркелями
前置格МеркелеМеркелях

Футболист "Милана" Меркель хочет выступать за сборную России

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